償いと試練編㊳

 彼の霊は常に瀬戸際にあり、かろうじて踏みとどまってはいたものの、その立場は非常に不安定でした。彼が対峙している日常生活の問題に対しては容易に解決が見いだせず、いつ終止符が打たれるともわからない日々が続く中で、彼は次のように覚悟を決めるようになりました。

  • ここに及んでは、もはや信念を持って事にあたるしかない。
  • 私は銃や剣を持たず、その代わり愛、寛容、慈悲、奉仕で挑む大軍の一翼であるということを信じるしかない。
  • 真の勝利とは、不義や悪を働く欲求に圧倒されることなく、神の義を全うすることである。
  • 日常生活では、神に祈りながら常にベストを尽くすこと。
  • 復讐は神の専門分野であるから神に任せること。
  • 私は神ではないのだから、ひたすら神の義に尽くすこと。
  • 差し向けられた悪に対して、すべての善で対応すること。

すなわち、

  • あなたを迫害する者へ親切に接し、
  • あなたを侮辱する者を褒め称え、
  • あなたから100円を奪うものに1,000円を与え、
  • あなたから飲み物を奪うものに食べ物を与え、
  • あなたを汚い言葉によって傷つける者に清い言葉で癒やし、
  • あなたを高ぶりによって威圧し不快にさせる者には、謙虚さを持って接する。

 これらは、かつて地上でサウロもしくはパウロで知られた方が同じ趣旨の手紙を書いています。また、日常生活で困窮し続けたにも関わらず、死の際にあってもなお真理を疑わず、明るく接したソクラテスのような先駆者たちもいます。

 さらに、かつて彼を窮乏から救った霊からの通信記録には、次のようなメッセージが残されています。

                                       

 私たちは、これまでも数々の中傷、敵意、迫害に会ってきました。

 しかし、勇気ある心の持ち主や断固たる決意を持った魂が闘ってきてくれたおかげで、こうして霊の力が地上に顕現することができたのです。

 今この時も、新しい世界の前線に多くの勇士が歩哨に立ってくれております。ですから、私は皆さんに元気を出しなさいと申し上げるのです。

 心に迷いを生じさせてはなりません。混迷極める世の背後にも神の計画の存在を察してください。あなた方もその新しい世界の建設の一翼を担っていることを自覚してください。真理は絶え間なく前進しているのです。

 意気消沈した人、悲しげにしている人に元気を出すよう言ってあげてください。先駆者達の努力のたまものをこれから刈り入れるのです。そして、それが明日を担う子どもたちにより大きな自由、より大きな解放をもたらす地ならしでもあるのです。

 不安は無知という暗闇から生まれます。勇気は自信から生まれます。すなわち、自分は神の一部であるとの真理に目覚めた魂は、いかなる人生の嵐を持ってしても挫かせることはできないとの自信です。

 私が示しているのはごく簡単な真理でありこの上なく大切な真理です。地上人類が自らの力で自らを救い、内在する神性を発揮するようになるためには、こうした霊的真理を日常生活において実践する以外にないからです。

 あなた方が手にした真理は、すべての霧とモヤを払い、悟りの光によって暗闇を突き破ることを知ったからには自信を持って生きてください。

 しかし、同時に知識には必ず責任が伴うことも忘れてはなりません。知った以上は、知らなかった時のあなたとは違うからです。その知識を賢明に、そして有効に生かしてください。一人でも多くの人がその知識を手にし、それによって魂が鼓舞され心が開かれるよう配慮してあげてください。

 私達の方でも一人でも多くの人の涙を拭い、心の痛みを癒やし、真理を見えなくしている目隠しを取り除いてあげようとの態勢でいるのです。

 親である神を子等に近づかせ、子等を神に近づかせようと心を砕いているのです。そうすることで利己主義が影を潜め、生命の充実感を地上に生きる人のすべてが味わえることになるでしょう。