償いと試練編㉞

 心温まる月光に照らされながら、彼の霊は確かに聞きました。

  • 地上で受ける苦難の旗印とする向上進化とは、神なる存在に己の霊を近づけることを意味する。
  • しかし、神なる存在の定義については、神なる存在に聞かなければ分からない。全能者が非全能者を定義することができても、非全能者が全能者を定義することはできない。
  • そして、かつてあなたは自ら御父の居場所から遠ざかり、その御加護から遠ざかった結果、苦難を体験することとなった。
  • しかし、心優しき御父がその定義を常に示しているにもかかわらず、あなた方は自信が犯した罪によってその目を曇らせることで、その定義が分からずに迷い苦しんでいる。
  • したがって、御父の声を聞き、一歩でも良いので神なる存在に己の霊が近づけるように貴方の目の曇りを拭い去らなければならない。人の目の中のおが屑を取り除く前に、自身の目の中の杭を取り除くが如く。
  • そのためには、貴方の霊を苦しみのるつぼへ投げ入れ、涙と恥辱の中で霊を清め、視界を広げなければならない。
  • これが神と貴方との間の通信経路を整備することであり、これによって神が啓示し続ける霊の姿を地上の者が受け取れるようになる。
  • これが唯一の方法であり、これ以外に方法は存在しない。そして、受け取れる内容はあくまで整備できた通信経路の状況による。
  • 神がその姿を教えないのではない。それを受け取るだけの準備が貴方にできていないのだ。

 次に、彼は次のとおり彼の良心の声を聞きました。

  • この目的を果たすため、あなたが地上にいる間、地上の貴方にはあなたを滅ぼそうとする自我にあなたを迫害することを許している。
  • その悪しき自我は、かつて今の貴方と同じ境遇に地上で生活し、同じように周囲からいじめられ、迫害を受け、耐えきれなくなった結果、家庭を崩壊させた自我であり、かつてその自我が経験したのと同じ体験を彼に味わせ、同じように彼を屈服させることを愉快とするものである。
  • その目的を達成するために、悪しき霊は貴方の周囲の者達の口を借り、あなたを迫害する。あなたはそれらに勇気を持って耐えなければならなくなる。
  • そして、あなたはこの体験を経て理解する。天にまします御方に対して謙虚であるということがどういうことかを。父に対して謙虚であるためには、あなたの心は人に対して純粋でなければならない。邪であってはならない。人に怒ってはならない。恐怖を覚えてはならない。常に、平静であらねばならない。

 彼はこれまでの苦難に思いをはせながら、霊に刻み込まれ揺るぎない基礎となりつつある神の真理の一部を思い返しました。

 同時に、彼の両親の霊がそれらの真理を得ることを要求した場合に訪れることになる、経験しなければならない苦しみの大きいことや、彼らがそれらを得るには、決して一度の機会ではあり得ないことを悟りました。

 それは数々の苦難の体験を経て、それぞれの十字架を背負いながら、徐々に時間をかけて階段を上がっていくことに等しいものであり、事を急いでは積み上がらないものであり、むしろ、早急を求めては彼らの霊は苦難に耐えきれず、ひいては重大な悪影響を与え、向上進化に向けた計画を挫折することにもなりかねません。

 それは自然の季節が巡りゆくのと同じように、あるとき真理に目覚める春を迎え、希望に燃え、邁進し夏を過ごし、やがて挫折の秋を迎え、寒風吹きすさぶ試練の冬を迎えることです。

 この体験を少しずつ幾度も繰り返しながら、時には後戻りしながらも、彼らの霊は進化向上していくことを理解しました。