償いと試練編⑭

○婚姻前

 彼の霊を向上進化させるため、あらかじめ計画されていたプランが実行されようとしていました。これを援助するのは彼を補佐することを誓ったものたちです。

 そのプランは、彼にある人物をめぐり合わせることで日常生活における数々の試練を経験させ、一歩ずつ進化の階段を上らせようとするものでした。もちろん、進化に関係のない危険が伴う可能性が十分に考えられるので、その点は補佐するものたちによって彼は何重にも保護されていました。

 その苦難の最中においては、彼にそのことを認識できようはずはありませんでした。それが計画の一部だからです。補佐するものたちは彼らが援助している事実を決して明らかにしません。これは、かつてトビアが旅する際に随行した者が、彼の旅が終わった後に初めて自身がトビアを保護する目的を持った、天からの使いであることを明らかにしたことと目的を同じくします。

 ただし、補佐する者たちは苦しむ者の頭上で腕組みをしてふんぞり返り、「当然の報いである」と豪語して傍観するのではありません。

 苦難に直面し、一切の望みを絶たれ暗黒の心中のなか慟哭する彼のすぐ傍らに立ち、その苦しみを理解し同じように涙しながらも、あえてなにもせず彼のそばに居続けるのです。

 補佐する者たちにとって、地上の困難を打ち消すよう手配することは簡単です。霊が主で、物は従だからです。

 しかし、それでは意味がないのです。そこで手を出し彼から困難を取り除いてしまっては、彼が地上に生まれることとなった目的を達成することができなくなってしまうからです。それでは、いつまでも同じことを繰り返してしまうことになります。神が創造した進化の法則を無視することになってしまいます。

 さて、補佐する者たちが彼に手配した「ある人物」は、彼の妻となりました。

 彼の妻は臆病でした。臆病であるが故に地上の物事に恐れを抱き、その恐れに対して物的満足を得ることで対処しようとしたのです。

 また、彼の妻が過去に生じさせた因縁と彼女自身の選択により、現世において彼女の肉体を司る脳は、通常に比してその機能の一部が制限されました。

 そのため、彼の妻の自我は臆病で純粋であって、そこから発せられる良心の声は純粋であっても、その声が肉体の脳に伝わり、肉体が行動する段階になると、周囲の理解を得られるものではない利己的な趣に包まれてしまうのです。