このころ、彼は空腹とそれに伴う怒りの感情にたいへん苦しめられていました。
おなかが減りますが、食べ物は与えられません。やっと用意されたかと思えば、そこには嘔吐物のような食べ物が置いてあります。しかし、彼以外の家族はきちんとしたものを食べているようです。
いくらおなかが減っても仕事は待ってくれません。子どもの面倒を見なければいけません。それらの仕事は、彼の責任であることを自覚していたからです。
空腹に耐えながらも責任を果たしつつ、空腹を満たすことがない食べ物を口にする。このような状況を生き地獄と言わずして何というのでしょうか。
彼はいつしかこう思うようになりました。
「お願いですから、いっそのこと早く死なせてください。」
彼は、これらの諸行が呪いの域に達していることを確信していました。
彼には為す術がありませんでしたが、ただひたすら毎日、行うべきことを行い続けるしかなかったのです。