償いと試練編㉛

○ 結婚8年目10月

 彼は彼の妻からあらゆる手段で抑圧され、彼の父からは臆病者と非難され、また、彼の母からはその口から出る悪い言葉を日常的に浴びせられました。三者が三様に彼を迫害しようと群がっていたような構図です。

 それらは彼にとって苦難の毎日でした。

 彼は、この苦難を耐え忍ぶには、それらが与えられるに至った理由を知る必要があると考え、その理由が提示されることを求めましたが、容易に明かされることはありませんでした。

 むしろ、考えれば考えるほど彼の思考は歪曲され、かつて地上の先駆者が語った「隣人を裁いてはいけません」という言葉の実践に務めていたものの、彼の周囲を取り巻く者達からの攻撃は熾烈を極めたので、いつしか彼は、周りの者達を裁き始めていたのです。

 そして、彼は沸き起こり続ける怒りを抑え続けなければなりませんでした。

 そんなことにはかまわず、彼の家族は、怒りに苦しむ彼にさらに苦しみを与え続けたのです。

 それに耐えるため、彼は人がこのような行為に及ぶ理由を考えました。しかし、どれも彼を得心させ、その苦しみに耐えられるほどの真理を与えるものではありませんでした。

 それはこの時点で仕方のないことでした。なぜなら、その真理が得られるだけの通路が彼の中に確立されていないからです。通路を確立するには、さらに苦難の体験を経て、失意と絶望の涙のなか金属を精錬し、純金に鍛え上げるが如く彼の魂を鍛錬しなければなりません。

 彼の家族からの抑圧に加え、彼の幼い娘の看護義務も加わり、彼はこれまで何度かそうであったように体調を崩しました。

 そして、彼は疲弊しきり、頬はこけ、体からは骨が浮かぶようになりました。