崩壊と創造編②

 高熱にうなされ、食事が喉を通らず、病院にさえも通院させてもらえない彼は、意識が朦朧とする中、彼の守護を司る存在へ向け心の中で次のように叫んでいました。

 次からの記述は彼が申し立てした内容です。

 

 近頃、この生活を送ることが困難を極めています。原因はいくつもありますが、特に食べられないことが大きな原因です。霊からの通信とされる言葉によると、この地上での生活を選んだのは自分だと言います。だから困難についても事前に承知しているのだから耐えられるはずだ、と言います。この点で、大いに疑問を感じています。今の私のように、困難な時に救いがなければ、人は耐えようとなどしません。肉の本能を充たすことを当然と考えるでしょう。はっきり言いますが、霊の進化向上などバカげています。食べられない苦しみの中で、人に優しくせよ、思いやれ、など、自然法則に反していると考えています。霊と肉が密接に関わっているならばなおさらです。神はそのように人間を作られたのではありませんか。はっきりいいますが、このままではこの生活はいつか終わりを迎えます。ならば、滅びる者を思いやることなど理に適っていません。滅びる者は滅び、存続する者は存続します。滅びる者を愛して何になるのでしょうか。滅びる者は自ら滅びの道を選ぶのです。滅んでしまえば良いのです。そこに愛を傾ける理屈は立ちません。こちらは空腹なのです。妻からの配給食料(朝食なし、昼はナス数片、ミニトマト数個、オクラ4~5本、夜は何かを2口食べる程度)以外の食糧を食べることが発覚し妻から咎めを受ける。だから、食べるときも気にしながら食べる。良心が咎めない程度に食べる。こんなアホなことがあるでしょうか。私たちの至上目的は食べることではなく、霊の向上進化にあるはずです。今の状態では意識が完全に食べる方向に向いてしまいます。これでは、犬や猿と変わらないじゃありませんか。退化しているではありませんか。我々は向上進化する法則の下に存在しているのではなかったのですか。この体験が霊の向上に資するか否かはもはや考えません。確実に言えることは、すべてが滅びの方向に向かっていると言うことです。空腹に耐え、怒りに耐え、生活に耐えることが永続することだとでも言うのでしょうか。耐え忍び、生活するための燃料までも絶たれて何が霊の向上進化でしょうか。いま、おおいに疑問を感じています。妻に疑問を感じているのではありません。神に不審を抱いているのでもありません。魂がこの地上で経験を得るシステムそのものに疑問を感じているのです。誰かがこのように言っているそうです。

「地上は低い世界でやがて全体が向上する世界です」

?ハア?

何をバカなことを。この霊と肉と精神のシステムで挫折するなと言う方が不可能です。間違いなく言えます。地上は崩壊するように出来ているのです。その崩壊する世界で永遠の霊が生活するということ自体が矛盾であり、無理を含むものであり、不自然なのです。不自然だからこそ、これだけ苦しみが溢れているのです。

「この世界で体験を積むことを事前に承知したのはあなたです。だからあなたは乗り越えられます。あなたの責任で頑張りなさい」、という偏屈極まる理屈を並べるんじゃない。結論は目に見えている。夫は妻を殺し、子を叩き、食欲、性欲を満たし、肉欲のまま自由気ままに生きるようになるだろう。それが罪?あらたな苦しみを生む?
その制度自体がくそったれで救いがないと言っているんだ。

ああ、腹が減った。白い飯が食いたい。

一度、霊の向上進化のことなど忘れようか。私は日常生活を送るだけで精一杯だ。

バカバカしい。もうこりごりだ。